第1話

5/5
前へ
/5ページ
次へ
キーンコーンカーンコーン―――――… 「チッ、鳴っちまったじゃねえか。しゃーねーな。 オラきりぃーーつ!!!」  あからさま不機嫌な担任の態度に、俺と健は顔を見合わせ、少し気まずそうに苦笑いをした。 「あ、そうそう、神崎ー! ちょっと職員室来いやー!!」 教室から出ようとした矢先に担任に呼び止められ、健の方に目線を送ると、『ドンマイ!』といった表情で爽やかな笑顔で俺を見ていた。 ちくしょーー……。 担任と共に職員室に向かい、ドアの前に立つとうっすら職員室独特のコーヒーの香りが漂ってきた。 昔っから職員室って好きじゃねーんだよなぁ……。 半ば強引に連れられて使われていない相談室へ入ると、ほぼ2人同時に椅子に腰をかけた途端、担任がおもむろに口を開いた。 「で、まだ、あっちで働いてんのか?」 『あっち』とは、俺のバイトのことである。 ……そう。  俺には秘密がある。 誰にもバレてはいけない秘密が。 担任には、俺の育ちや境遇などが知られているため、こうしてたまに近況報告をさせられる。 「そりゃ働いてますよ。そうしなきゃ俺の目的は達成出来ませんから。」 「でもな、何も高1で無理して体張らなきゃならないようなバイトなんて……」 何を言われても、俺は今のバイトを辞めるつもりはない。 心配そうな面持ちで俺を見つめる担任。 「心配なさらなくても、学校にも、先生方にも迷惑かけるつもりないんで。安心してください。」 その言葉に、担任の表情が少し険しくなった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加