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黙々と歩く野崎の後ろを付いていくと、中庭に着いた。
なんで校舎の外? 1階って言ってなかったか?
正門に向かう学生の流れに逆らって歩く俺達は、この間、宮川が夢中になってカメラのレンズを向けていた場所までやって来ると、野崎が足を止める。
こっちまで来ると、周りに学生の姿はなかった。
視線の先にあるのは、横に伸びた校舎に沿うように立っている細い木々。
薄い緑の小さな葉っぱが幾重にも重なって、校舎の中はよく見えない。
どこに視線を置けばいいのか分からずにいると、一度、俺の顔色を伺うように見下ろしてくる野崎が、校舎の方に近付いていく。
なになに……。
いつもとどこか雰囲気が違う野崎の背中を見て、緊張を腹の底に感じた。
「ここに立って」
「……」
言われた通り、中庭に敷かれたレンガと校舎側に植えられている芝生の境に立つ。
そこからは、さっきは見えなかった校舎の中が見えた。
幾つも並んでいる戸は全部閉められていて、上の階に比べて薄暗い廊下。
「どこ見ればいいの?」
横にいる宮川に問い掛けると、
「ほら、出て来たよ」
と、野崎に言われて顔を正面に戻す。
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