重なり(後編)

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「――ヒッ」 顔をグニャリと歪めて堀内が俯いてしまうと、髪で隠れて表情が分からなくなる。 「堀内……」 「んんん――」 喉から絞り出すような声が返ってきて、口を強く閉じているところを想像する。 素っ気無い態度見せても、俺の傍にいて。 何度も“別れる”って聞いても、首を縦に振らないで。 人の背中に隠れてた頃とはもう違うって、自分で思わないのかな。 「気付いてやれなくて、ごめん」 男のことを、なんであんなに頑なに俺に言わなかったのか、もう、考えなくても分かる気がする。 “幻滅しましたよね” さっきまで心の中にあった黒い汚い靄のことを考えると、堀内が一番恐れていたのは、俺があの感情を抱くことだったんじゃないかと思う。 「俺……どうしたらいい? 分からないんだ。どうしたら、泣き止んでくれる?」 今辛いのは堀内なのに、自分の口から出た声は掠れていて、声だけ聞けば、俺の方がよっぽど辛そうで笑える。 堀内が少しだけ顔を上げて、濡れた睫が見えた。 頭を傾けて覗き込むと、肌の色がみるみる赤く染まっていく。 掴んだままでいる手首まで熱くなる気がした。 「堀内?」 「うま、馬木くんに」 「うん?」 「触られたい」 「――え?」 聞き間違えかと思った。
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