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「血が…!」
「……おまえ」
真っ白な包帯に映える赤。
亜月はそればかり気になって気が付かなかったが、男は亜月を凝視した。
「来い」
「え、どこに?」
「まずは俺んちだ」
「そ、その前に病院に…」
「病院は後でいい!」
出会って初めて男が声を荒げた。
血の付いていない方の手で亜月の腕をしっかりと握り、小走りで夜道を進む。
その横顔はどこか切羽詰ったように見える。
少しして二日前に見た日本家屋へたどり着いた。
乱暴に引き戸を開き、ダイニングへ亜月を押し込む。
そばにあったソファへ亜月を座らせた。
男が彼女の栗色の前髪をかきあげ瞳を覗き込んだ。
「…嘘だろ…」
男が崩れるように座り込む。
亜月は何が何だかわからず、乱れた前髪も直せずにいた。
「覚えてるのか」
男が問う。
何をだと視線で問えば、「そんなわけないよな」と彼は銀の頭を抱えた。
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