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頭がパンクしそうだった。
とにかくわかったのは自分が人間ではないということ。
裁判所に見つかったらすぐ殺されてしまうということ。
そして今まで凌が話してきた話が、作り話にしては出来過ぎているということだった。
ソファに逆戻りした亜月を見下ろす。
凌は小さく溜息をついた。
昔から何かを誰かに説明するのが得意ではなかった。
気を抜けばきつい口調になるのが、凌の欠点だった。
「…大丈夫だ。外に一歩も出るなっていってるわけじゃないんだし。今まで通り、学校に通いたいなら通えばいい」
「……」
「今日はもう寝ろ。そろそろ10時になる。部屋は二階だ。行けばわかる。その部屋の物は好きに使っていい。昔おまえが使ってたもんだ」
凌の声に、先ほどまでの緊張感はなかった。
出会った頃と同じ、ゆるく語尾の透ける話し方。
それはやさしく聞こえたが、同時に何の色も浮かばないただの言葉の羅列のようにも思えた。
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