第一章

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三者三様の罵詈雑言を浴びせている様を見ると怖気づきそうになるが、此処は我慢である。 ふと春人がため息を交じりに呟く。 「━━━━それにしてもお腹減ったなあ。こうなったらそこに隠れているウサギでも食べようかな」 春人以外の三人は一瞬ハッ、と不思議な顔をしたがすぐに理解し、十六夜が相槌をうった。 「だな」 物陰に隠れていた黒ウサギは心臓を捕まれたように跳び跳ねた。 四人の視線が黒ウサギに集まる。 「なんだ、春人君も貴方も気づいていたの?」 「もちろん!」 「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そっちの猫を抱いてる奴も気づいてたんだろ?」 「風上に立たれたら嫌でもわかる」 「……へぇ?面白いなお前」 軽薄そうに笑う十六夜の目は笑っていない。四人は理不尽な招集を受けた腹いせに殺気の籠った冷ややかな視線を黒ウサギに向ける。黒ウサギややひ怯んだ。 「や、やだなあ、御四人様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」 「無理」 「断る」 「却下」 「お断りします」 「あっは、取りつくシマもないですね♪」 バンザーイ、と降参のポーズをとる黒ウサギ。しかしその眼は冷静に三人を値踏みしていた。 (肝っ玉は及第点。この状況でNOと言える勝ち気は買いです。まあ、扱いにくいのは難点ですけども) 黒ウサギはおどけつつも、三人にどう接するべきか冷静に考えを張り巡らせている━━━━と、春日部耀が不思議そうに、神凪春人がニコニコしながら黒ウサギの隣に立ち、黒いウサ耳と尻尾を根っこから鷲掴み、 「えい」 「ふむふむ」 「フギャ!」 力いっぱい引っ張った。
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