先輩がやってきた

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 三十歳ぐらいの背の高い地味な服装の男が、レジデンス茜台403号室の玄関ドアの前にやって来た。  呼び鈴ボタンを押すと、チープな音が鳴った。  しかし「伊藤」というステッカーが貼り付けられたドアは開く気配がない。かといって、留守ではないはずだった。  何度か呼び鈴ボタンを押すが、反応がない。  ドアノブを回すと鍵がかかっていた。  ――仕方ない。  そうつぶやいて、彼はキーを取り出す。さし込んで回し、ドアを開くと、薄暗い玄関スペース。その向こうにリビングがある。間取り2DKの小さめの部屋だ。 「おーい、いるのはわかっているんだ。いったいなにをやっている?」  彼は部屋の奥に向かって呼びかけた。 「……」  しかし反応はない。
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