第1話 はじめまして公爵様。

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「では、おじ様でいかがでしょうか?」 さあこれでどうだ。 フォルデリカは意気揚々と提案したのだが、一睨みだった。 常日頃から眼差し鋭い公爵だ。 視線ひとつで相手を黙らせてしまうという特技を持つ。 ――要はあまり言葉で表現するタイプではない。 そう。 だからアルザルド公爵は、とんだ気難し屋と囁かれていた。 そんな公爵をものともしない少女は、呆れ顔でため息をついた。 話しがいっこうに進まないではないか。 「不服そうですね」 「……名前で」 「はい?」 「名前で呼べばいいだろう」 「名前ですか。名前ですね。えーっとちょっと待ってくださいね」 「……。」 正直、そう来るとは予想していなかったので、まあ・おいおい覚えて行けばいいか! と気楽に構えていたとは言えない。 それでなくとも皆が皆、彼を公爵様としか呼ばないから、それしか覚えていない。 「えーっと、高貴な御方の名前はちょっとムツカシイのと、緊張してるから中々思い出せないだけなので、あんまりプレッシャーを与えないで下さいましね?」 どこかだ、と視線だけで問いかけてくる公爵様に、フォルデリカは考え込んだ。 ええと。 えっと。 えぇーっと? この方に初めて会ったのは、確かひと月ほど前だった。 アルザルド家の紋章入りの馬車が、フォルデリカの生家の前に止まったのは。
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