2.世界

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 風と炎の障壁による粉砕されたマネキンの一部が内側に落ちた。トコリコはそれを拾い上げ観察した。一見するとマネキンに似ているが、焦げた痕や質感は無機質ではなく生物と同じようだ。荒廃した外で生きていることから察するに、このマネキンが原因であると思われた。 「この生物は何だ?どうやって、生きているんだ。ネロ、お前は知っていたか?」 「いや。俺は知らない。図書室の書物にも、この生物に関する記述はなかった」  外を知らないネロにとって図書室の書物だけが、外を感じさせたくれた。だが、そんな書物にもこんな生物はいない。 「口も目もないし、どうやって生きているんだ?しかも、こんなに多く・・・」  トコリコは適当に黒こげになったマネキンを触りながら、その正体を探ろうとした。もっとも、トコリコに生物学の対する知識があるとは思えない。精々、他の世界で目撃した似たような生物と照らし合わせる程度のことしかできない。 「ん?これは・・・」  トコリコはマネキンの腹部にある奇妙なマークに目が止まった。黒こげになっていたが、何かのマーク、いや、アルファベットの〈C〉に見える文字と、〈NO.〉の文字が。そして、NO.に続くと思われる数字は人為的に削除されていた。今の戦いで消された訳ではなさそうだ。ずっと、前から消されたままの状態だった。  トコリコはそれを目撃したまま身体を硬直させていた。 「どうした?トコリコ」 「そんな、馬鹿な・・・!」  珍しくトコリコは動揺していた。  これは、偶然なのだろうか。それとも、何かしらの要因が重なりあったのか。  トコリコは、そのマークに見覚えがあった。  それは、トコリコが元いた世界でのこと。世界を襲った滅亡の危機。その際、敵側に一人の科学者がいた。かつては、赤髪の軍人と同じ軍に所属していた人物。そいつが、創り上げた生物兵器にも、同じ烙印されていた。  しかし、それは過去の話だ。間違いなく、その科学者は司令官であった赤髪の軍人によって射殺されたはず。そもそも、トコリコがかつていた世界に彼らがやってきたのも、偶発だった。そこで、その科学者は新たな世界を知り、その上で、『奴』の側近となった。
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