3.王

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 何とも言いようがない寒気がトコリコを襲う。もし、このマネキンのような生物が、同一人物の手によって生み出されたとしたら。  それは、つまり。 「!」  トコリコの推察は中断された。本能的に何かが来たことを察した。振り返ると、ガトリングガンを竜巻に向けて掃射する。風と炎で守られているはずの障壁。それが破られた。  マネキンではない。  手裏剣のような円盤に鎖が巻き付けられた武具によって、障壁が切り裂かれた。ガトリングガンの弾は切り裂いたそれに命中して、上手いこと弾いた。  切り裂かれた障壁は、もう壁としての役目は果たせない。風と炎は消え去り、視界が開けた。 「チリ所長!」  ネロは声を上げ凶悪な武器を持つチリに対し敬礼する。  見ると、チリだけではないく、副所長のペッパー、第一看守長のラー、第二看守長のリック、第三看守長のタード、監獄の主力とも呼べる人物が一堂に会していた。  敬礼するネロに対して彼らは何故か口を噤んでた。 「あのチリ所長?」  いつもと様子が違う彼らに、ネロは戸惑いを覚えた。上司や国王に当たる人物とはいえ、普段は温厚な彼らはただならぬ様子で立っていた。  どうして、何も言わないのか。そんな、戸惑うネロに代わるかのように、トコリコは彼らの前に出た。 「何のマネだ」  初め、ネロはトコリコの言葉の意味が分からなかった。何に対してトコリコは「何のマネ」と言ったのか。トコリコの問いかけに返答するように、チリが口を開いた。 「まず、今回の働き、感謝する。お前達のおかげで、この辺りにいた、人形モドキは一掃された」  チリは冷淡に『お前達』という言葉を使った。それは、ネロにとって更なる現実を知らしめるには充分すぎた。 「チリ所長・・・。お前達って・・・」  彼らがネロに向けている視線はすでに、同じ看守を見る目ではなかった。まるで、赤の他人を見るような冷淡な目だ。 「ハバ・ネロ・・・。残念だが、お前をこの男と共に処刑する」  チリは感情を込めず、今から執り行うことを述べた。 「処刑って・・・」 「お前は、不審者である、この男を逃がしただけではなく、許可なく『外』に出た。おまけに、外の秘密を知ってしまった」 「オレ様を含め、ネロも口封じに処刑するっていうのか?」
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