3.王

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 トコリコは分かり切ったように言った。さっきの攻撃は二人によって生み出された障壁を壊すものではなかった。初めから、障壁の中にいた二人を殺す為にされたこうげきなのだ。ネロと違い、トコリコにはそれが分かっていたから一切の戸惑いがなかった。 「悪く思わないでくれ。国民にとって、外は『希望』なんだ。希望が大きければ、大きいほどに、あの狭い世界を生きていける。それが、国民の生き方なんだ」  チリは感情を押し殺して、二人に言った。それは、彼らにとっても辛い選択だった。それでも、多くの国民の幸福を守る為には仕方のないことであった。 「笑わせるな」  トコリコは口元をニヤつかせて、彼らに言った。 「お前達は、何の権限があってオレ様を処刑するなんて言うんだ?」 「それは、私が国を統べる国王であり所長だからだ」 「おいおい。舐めるよ。所長さん。ここは、刑務所でもなければ、監獄でもない。ただの廃墟の町だ。ここでは、所長も看守もない。こんな場所でも、自分の権限を生かそうとするなんて横暴じゃないか」  トコリコは引く気はなかった。この状況でチリ達と対峙するつもりでいた。 「ネロ。お前はどうする?黙って処刑されるか」 「それは・・・」 「さっき、自分で言っただろう。戦わなければ、悩むこともできない。悩むということは生きている証だ。証をなくした奴は生きてなんかいなqい」  トコリコは良いことを言っていたが、その当人が一番悩んでいないということはこの状況で口にしてはいけなかった。だが、トコリコの言葉をネロの心を突き動かす。 「オレ様は勝手に、やらせてもらう。オレ様を処刑すると言うのなら、覚悟は出来ているのだろうな」  トコリコの左腕が変化する。無意識の変化だった。チャージガンでも、ガトリングガンでも、スナイプでもない、新たな武器。左腕が手のようなかぎ爪とロープのフックショットに変化した。  その変化にトコリコは驚かなかった。それは新たに出来た腐れ縁、〈LINK〉から生まれた武器であったから。  ネロはトコリコと並び立つと、ロープを構える。 「チリ所長。それに、みんな、悪いけど、俺はまだ死ねないんだ。俺は、外を、いや、世界を知りたくなった。自分がどんな所で生きているのか。これから、何をするべきか」
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