第5話 失ったもの

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ーーーー「璃帆、本当に行く気なんだな」 身支度を整えて、必要最低限の物をバッグに詰めて階段を降りると、お父さんが私を待っていた。 お父さんの顔は少し赤くて、多分昨日の夜お酒を飲みすぎたせいだろう。 「行くよ。もう決めた事だからね」 「東京は、お前が思っているような町じゃないぞ。父さんも昔、東京にいた事があったが、良い思い出は母さんと出会えた事くらいだ」 「お父さん、それ昨日も聞いたよ」 「そうだったか?」 「そうだよ」 お父さんは気恥ずかしそうに赤い顔で苦笑いする。 その姿が、自分の父親にも関わらずなんだか可愛く見えてしまう。 「でもさお父さん。お母さんに出会えたんだから、東京へ行って良かったんじゃない?他に良い思い出がなくても、それだけで最高の思い出だと私は思うよ」
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