第5話 失ったもの

3/18
前へ
/18ページ
次へ
「はは……そう返されたら、もう他に言葉がない」 お父さんは顔を引き締め、真顔で私の顔を見つめて言う。 「行ってこい。父さんはもう何も言わん」 私は大きく頷いて靴を履く。 「でも、もし家に帰りたくなったらいつでも帰って来なさい。父さんと母さんはここにいるから」 「うん、行ってきます」 私は振り返らずに家を出た。 玄関のドアを開ければ、お母さんが笑顔で私を待っていてくれた。 「璃帆、体には気を付けなさいよ。何かあったらすぐ連絡しなさい」 「もう、わかってるってそれくらい。お母さんも体には気を付けないとダメだよ?」 「大丈夫、あなたの母さんは元気だけが取り柄なんだから。こっちは心配しなくていいわよ」 「うん……じゃあ、行ってくるよ」
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加