第5話 失ったもの

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「奏樹……?」 重たい瞼を擦りながらこじ開けて、隣の布団で眠っていたはずの彼の名前を呼んだ。 しかし反応はなく、薄く開いた瞳から垣間見たその場所に彼の姿はなかった。 「あ……れ……?」 眠気はその瞬間に完全に消し飛び、脳内は覚醒する。 昨日の告白、彼はその返事をする事なく行ってしまったんじゃないだろうか。 そんな嫌な想像が頭の中を駆け抜けていった。 パジャマ姿で部屋を飛び出し、彼の名前を呼んでみるが返ってくる声はない。 一階に降りて彼の姿を探すが、やはり私の視界に彼の姿は入り込んでこなかった。 「もしかして……今日帰る事がわかってて……」 だから昨日返事をしなかったのかもしれない。 浮かぶのは悪い方向の思考ばかり。
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