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頭を左右に振って、自分の中からマイナスの思考を追い払う。
彼はそんな人じゃない、急にいなくなるような人間じゃない。
だって彼はとても優しい人間だから。
何も言わずに出ていけば、私が酷く悲しむ事を知っている。
彼がそんな事をするはずはないんだ。
そう考えるといくらか気持ちに余裕が生まれてくる。
私は大きく深呼吸して、裏口から外へと踏み出した。
「奏樹、こんなところにいたんだ」
外、少し肌寒い風の中、彼は聳え立つ富士山を遠い目で見つめながら、何かを思い耽っている様子で立っていた。
「起きたらいないからビックリしちゃったじゃん。どうしたの?富士山なんか見て」
「ねぇ璃帆、『徐福』って知ってる?」
彼は突然、妙な単語を口に出した。
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