第4話 元カノ元カレ

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さっきから無言の割には、何か企んでそうでコワイ。 「・・・送ってくれてアリガトウ」 そう言って出ようとするのを制し、わざわざ降りて助手席側に周ってドアを開けてくれた。 その颯爽とした身のこなしに、道行く女性から溜息が。 手にしていたショールを取り上げ、わたしに羽織らせると、 「ん・・・?!」 屈んでキスしてきた。 チョット!! みんな見てるじゃない!? わたしの抵抗を許さず後頭部を手で固定して。 何度も角度を変えて、深く口付ける。 「ふ・・・ぁ」 わたしから甘い声が漏れ出たのを確認すると、 満足そうに口の端を上げて笑った。 うー。 悔しいけど、東條のキスはめちゃめちゃ気持ちイイ。 少しだけくちびるを離して、 「また夜迎えに来る」 そう言ってまた軽くキスをする。 「うん・・・」 キスの余韻にポーっとなったまま、返事する。 わたしの頬を撫でながら、 「そんな表情(カオ)、他の男に見せんなよ」 苦笑して額にキスをすると、車に乗り込み去って行った。 まだポーっと彼の去った方を見ていると、 「紅羽、派手なお見送りだな」 彪翔の苦笑にハッとする。 彪翔が話しかけてきたのを機に、遠巻きで見ていた友人たちが群がってきた。 「あれ、紅羽のカレシ?」 「チョー格好好いんですけど」 「いいなあああ」 わいわい騒がれ、彪翔と離されてしまった。 仲良かったサークル合同の同窓会。 彪翔はわたしのサークルと、テニスと掛け持ちしていたから。 彪翔狙いの女子もたくさん来ていた。 ゆるいくせ毛の茶色い髪。 長身にスマートな体型。 その割には引き締まった身体をしていて。 話し方も優しくて。 父親が大手商社の専務とあれば。 群がる女子の目つきが・・・ 「コワイ」 完全にハンターの瞳になっていた。 ああ。 彪翔・・・ごめん。 わたしはそこから助け出す勇気はないわ。
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