第4話 元カノ元カレ

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さて、美味しいもの探そう。 立食式だけれど、ちゃんと座る場所もあって。 山盛り盛りながら、皆と席についておしゃべり。 さっきの東條の事を根掘り葉掘り聞かれながら、 「そういえば」 誰かがふと気付いたように言う。 「紅羽、一時期あのくらい大きな男の子とよく一緒にいなかった?」 「あー。そういえば」 なんですと? 「それって、2年生の時?」 聞くとそうだと言う。 「彼に背丈は似てるけど・・・」 違うの? 東條じゃないの? 「金髪・・・だったよね」 へあ? 「うちらも遠くから見かけただけだから。でも確かに金髪だった」 「瞳も蒼くて、なんか留学生とかクレちゃん言ってなかった?」 また別の友人が。 金髪碧眼。 留学生。 確実に東條じゃない。 そして、その彼の事は完全に記憶から抜け落ちていた。 ---どういうこと? 東條の他にも、なにか忘れている事があるの? 「紅羽、眉間にスッゴイしわ」 皆に大笑いされて、思わずわたしも笑ってしまう。 楽しくおしゃべりしていると、 「紅羽・・・?」 後ろから男の人の声が。 振り向くと、 「あ・・・」 忘れていたけど。 いたんだった。 わたしにも元カレが。 一つ上の先輩だった彼は、少し大人びて。 でも当時と変わらない笑顔だった。 「ちょっと、いい?」 みんなと離れて先輩とホテルの庭に出る。 今日はポカポカ陽が照っていて、暖かい。 当たり障りのない話をしながら、近況を報告して。 「・・・・・」 どちらも無言になってしまう。 その彼の横顔をぼんやり見ていて、もうなんの感情も湧き起こらないことを不思議に思った。 『不感症なんだよ』 そう言ってわたしの元を去った彼に、今はもうどうとも思わないのが不思議だった。 東條の、おかげかな。 わたしの視線に気づいてバツが悪そうに頬を染めて横を向き、 「紅羽は・・・綺麗になったな」 頬を指でかきながらお世辞を言う。 「お世辞、上手くなりましたね」 「イヤ・・・本当に」 歩くのを止めてこちらを向き直った彼の瞳は、真剣だった。
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