第4話 元カノ元カレ

17/31
前へ
/1110ページ
次へ
「オレ・・・ずっと後悔してて」 複雑な表情を浮かべている。 そんな彼を、どこか他人事のように見ていた。 「紅羽、オレの事好きじゃなかっただろう」 思わぬ事を言われ、驚く。 「好き・・・だったと思う。けど?」 言いながら違和感が。 本当に? 「オレが強引に付き合わせたようなもんだったから」 先輩は俯いて、小石を蹴った。 「全然オレに夢中にならない紅羽が悔しくて」 彼はずっと目を伏せたまま。 「紅羽の傍にはイケメンの三浦がいつもいたし・・・」 ふっと目を開けてわたしを見た。 「だから、無理矢理抱こうとしたんだ」 そっと手を伸ばしてきて、わたしの頬を撫でる。 「オレが全部悪いのに、ひどい事を言った」 ごめんな。 泣きそうな声で謝ってくれた。 だから、 「・・・いいよ、もう」 彼に微笑んだ。 「違う!違うんだ」 急に彼に手を引っ張られ、よろけて胸に飛び込む。 「ずっと後悔してた。だからオレ・・・」 息も止まりそうなほどに強く。 抱きしめられ、 「先輩・・・?」 驚いて身を起こそうとするけれど、きつく抱きしめられていて身動きできない。 「やり直せない?オレら・・・」 抱きしめている彼の腕が震えてなければ、きっとどんな事をしても逃れてた。 「もう一度、オレの名前を呼んで・・・紅羽」 肩までゆるく伸ばしたわたしの髪に、顔を埋め。 震える声でそう言った。 先輩の、震える身体をそっと撫でる。 呼吸が落ち着くまで。 しばらくそのまま。 抱き締められて--- 「大丈夫?」 掛けたのは、そんな言葉。 少し身を起して、それでもわたしを腕から離さない先輩に、 「離して?」 そう言った。 哀しそうに微笑んだ先輩が、首を真横にして顔を近付けてきた。 「ダメ」 彼のくちびるを、そっと手で押し返す。 「好きなヒト、いるの」 くちびるを抑えているわたしの手を掴み、そっと手の平に口付ける。 「・・・ポルシェの彼?」 知ってたの? 「久しぶりに紅羽に会えると思ったのに・・・」 クスッと笑う瞳が、赤くなっていた。
/1110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28313人が本棚に入れています
本棚に追加