第4話 元カノ元カレ

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彪翔に気を付けろって・・・ 先輩はもう何もなかったかのような、涼しい顔。 息を切らした彪翔が、わたしたちの方へ駆け寄り、 「紅羽に今さら何の用ですか?」 先輩に冷たい顔して、聞いた。 「元恋人同士の語らいだけど?」 先輩も彪翔に負けないくらいの、冷たい表情。 「はっ・・・紅羽と恋人の期間なんてありましたっけ?」 吐き捨てるように言って、わたしの身体を引き寄せると、 「これ以上紅羽を傷付けないでもらえますか?」 底冷えのするような、冷たい声で云う。 どうしたの? 「騎士(ナイト)気取りだけど、三浦は彼氏じゃないいだろう。お前に云われる筋合いは無い」 先輩も引かない。 わたしの腰に回した手に、彪翔が力を込める。 「・・・オレは紅羽の親友ですから」 軽蔑した眼差しのまま、答える。 「それに紅羽にチョッカイかけると、コイツの男が黙ってませんよ」 口の端を上げて、 「先日も紅羽に喧嘩売った奴らが、ずいぶんヒドイ報復を受けてましたから」 は? 「先輩の為の忠告です・・・紅羽に2度と近寄るな」 わたしの身体ごと身を翻(ヒルガエ)し、最後の言葉はゾクっとするような低いく怒りを含んだものだった。 「ちょっと、彪翔・・・!」 とまどうわたしを無視して、強引にその場から離される。 「紅羽!またな!!」 遠くになった先輩が大きな声で叫ぶのに、首だけ後ろを振り返って会釈で答えるのが精いっぱいだった。 「彪翔!ねえってば」 「・・・何話してたの」 わたしの呼び掛けには答えず、 「アイツと何話してたの」 冷たい声で聞いてきた。 身体を引き寄せられたままホテル内に戻り、エレベーターに乗せられる。 彪翔の押した階数は、高層階のもの。 え・・・? 同窓会の会場は、そんなに高層階じゃない。 「ひょう・・」 「答えて」 わたしを見向きもしない、冷たい横顔。 どうしたの・・・? 「美味しいもの倶楽部・・・また作ったから入ってって」 戸惑いに掠れた声が出る。 「ふうん」 いつもと様子の違う彪翔が、少し怖かった。 彪翔の押した階に、エレベーターが。 止まる---
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