第4話 元カノ元カレ

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どうしよう。 このままだとキスしちゃう。 「彪・・・」 「話して」 ギリギリくちびるの触れそうな所で止まっている彪翔。 でも彼の吐息がかかり、甘く、感じる。 言葉を話す度にほんの少し触れるくちびるが、くすぐったい。 高鳴る心臓の音、 上手く呼吸が出来なくて息苦しい。 「言わないとこのまま触れちゃうよ」 真剣な言い方に、 「あの・・・」 「何」 「あの・・・」 「・・・・・・」 何か言わなくちゃと思うんだけど、言葉が上手く出てこない。 ちゅっ。 「?!」 音を立てて、くちびるの端ギリギリの場所にキスされた。 「ホラ、早く話さないと止めてあげないよ」 今度は耳元に口を寄せ、クスクス囁きながら呟く。 そのまま耳の後ろにも、 ちゅっ。 くすぐったいのと恥ずかしいので、身体がビクンと反応する。 「紅羽はイヤラシイね、そんな反応して」 今度は額を合わせ、瞳を覗き込んでくる。 「彪翔・・・」 「そんな潤んだ瞳で見て、僕を誘ってるの?」 ふるふると、力なく左右に首を振る。 恥ずかしさで涙が滲む。 その涙を舌ですくい上げて、 目元にもキスを落とす。 「ホラ、早く」 からかうような声は、悪戯に楽しんでいるようにも聞こえる。 「紅羽、こないだのパーティでひと悶着あったよね」 こないだの・・・ああ。あれか。 ぼんやりした表情で彪翔を見る。 「あの時の相手・・・何人だった?」 「3人」 「モデルの一人は業界から締め出され、重役の娘は父親共々北極圏へ左遷、もう1人の社長令嬢に至っては、父親の会社の株が急降下だよ」 うそ・・・ キラリ、射抜くような瞳でわたしと視線を合わせ、 「東條が気付かないとでも思っていたの」 「だって・・・何も聞かなかったし」 あの時はスウィートで朝までいたけど、そんな話には一度もならなかった。 「紅羽、傷付けられたんだよね」 手首と、頬を叩かれただけだ。 「次に同じことしたら、目玉をくり抜いて四肢を切り落としてやるって言ってたよ」 クスクス楽しそうに笑う彪翔の瞳も、怖い。 目が笑ってマセン・・・
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