第4話 元カノ元カレ

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「ねえ・・・紅羽」 わたしの頬を両手で覆い、 「このままキスしたら、僕だって止められない。ここにはベッドもあるしね」 彪翔? 「僕が紅羽を抱いたら、東條はどうするだろうね。紅羽は僕がどんなひどい目に遭(ア)ってもいいの?」 そう言いながら、今度こそ顔を真横にしてキスしようとしてきた。 「やり直そうって言われたの!!」 半分悲鳴のような声で叫んだ。 くちびるギリギリのところで止まる、彪翔。 「それから?」 ひーん。 それだけじゃ許してもらえそうにない。 「抱き締められて・・・」 「それから」 「・・・・」 これ以上は・・・ 未遂だし。 「ふうん・・・じゃ、キスするね」 「キスされそうにナリマシタ!!!」 後半はもうカタコトで、泣き声に近い叫びだった。 わたしの泣き声を合図に身体を離した彪翔は、わたしの顔をまじまじと見て、笑いだした。 「ぷ・・・くくっ。なんて表情(カオ)してるんだよ」 口に手を当てて、肩を揺すって笑ってる。 ふえーん。 ボロボロ涙をこぼしながら泣いてるわたしを見て、大笑い。 「ゴメンって・・・紅羽?」 そっとわたしの頭を抱き寄せて、身体をあやすように軽く撫でてくれる彪翔は、もういつもの彼だった。 「うーん。泣きやまないなあ」 ホッとしたら、涙が止まりません。 少し身体を離して両手で頬を包んで、親指で涙を拭ってくれる。 瞬きを繰り返しながら涙がポロポロ零れるわたしのくちびるに、 チュッ。 ふいに柔らかい感触が。 「・・・・・・・」 いま・・・ キスしたの---? もう一度瞬きすると、最後の涙がポロリと零れ、 「んっ」 もう一度彪翔にキスされた。 え? どうして? 驚きでキョトンとしてると、 「あ、涙止まったね」 ニッコリ笑って身体を離して、立ち上がった。 え・・・? 「???」 頭が混乱してきた。 えっと。 彪翔? ポカンと彪翔を見ていると、彼はスマホを取り出してどこかに電話をかけ始めた。 「---あ、東條?」 はい? なんで東條に?
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