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「紅羽やっぱダメだから、隔離してある・・・うん。・・・・うん」
東條の声は聞こえない。
「部屋は---」
ここに、東條が来るの?
電話を終えて、コッチを向いた彪翔が手を伸ばす。
「---?」
「さっき名刺貰ってなかった?」
どこから見ていたの!?
あっさり没収されてしまった。
「僕、東條からお目付け役頼まれてたのに、怒られちゃうよ」
ニッコリ笑う。
「紅羽、気付かなかったの?」
ナニガ?
「周りの男連中、紅羽の事ばっかり見てたんだよ」
「そんなことないよ。誰にも声掛けられてないし」
事実、女の子とずっと一緒だったし。
「うん、彼女達にはそうするように頼んでたからね」
「はあああ?」
なにそれ。
「独占欲の強い東條が、飢えた獣の群れに紅羽をそのまま放りこむ訳ないだろう」
笑ってる。
「で、本当に未遂なんだよね」
・・・ハイ。先輩とは。
じっと恨めしそうな目で、彪翔を睨んだ。
「・・・紅羽?」
ナニ。
「ちょっと無防備すぎるから、油断したらこれからも不意打ちにキスするから」
「はああああ?何言ってるの?!」
微笑む彪翔のその表情が、黒い。
「軽くとはいえ紅羽にそんな事したら、僕だってただじゃ済まないね」
スッと座っているわたしの方へ近付いて跪(ヒザマズ)き、
「僕の事大切に思うなら、東條にはヒミツだよ」
そう笑って、わたしの手を取り小指にそっとキスをする。
「僕たちだけの、約束---」
小指にキスしたまま、上目遣いでわたしを見る彪翔が色っぽくて、
「・・・うん」
思わず頷いてしまった。
彪翔って、あんなに色気があったっけ?
胸がドキドキする。
「それに紅羽のファーストキスは、僕とだしね」
悪戯っぽくウィンクする。
「・・・覚えてたの?」
昔戯(タワムレ)れにした、キス---
彪翔は素っ気なかったし何事もないような態度のままだったから、忘れてるのかと思ってた。
「そりゃ・・・なのにあっさり東條に持ってかれちゃったな」
苦笑した。
「でも紅羽のファーストキスの相手と、親友のポジションは譲れないな」
そう言って、わたしの鼻の頭を軽く弾いた。
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