28313人が本棚に入れています
本棚に追加
そういえば、と彪翔が何かに気付いたように、
「なんか話あるって言ってなかったっけ?」
ああ・・・
欠けた記憶の事。
聞いても・・・大丈夫かな。
あとはあの、金髪の男の子。
「・・・・・」
「・・・・・」
しばらく無言で見つめ合って。
「・・・今度のプロジェクトのテーマ、もう応募した?」
全く関係ない事を聞いた。
「うん」
なあんだ、その相談だったんだ。
彪翔が笑う。
それからしばらく企画の事について話す。
何社も参加して行うイベント。
数カ月かけて。
デパート、テーマパーク、アンヌさんのファッションブランド、中国系の化粧品会社、それらを取りまとめるのが商社である我が社だ。
一つのテーマを元にイベントを行い、関連商品としてそれぞれ提携している商品の購買欲を煽る。
そのテーマの公募。
一見バラバラな提携会社とそれが扱うものを一つにまとめるための、テーマ。
「原案ってなんだったの?」
アンヌさんはボロクソに言ってたけど。
「・・・明日への希望・・・」
「・・・・」
「どっかの御曹司の案らしいんだけど」
センス、ないね。
「ラ・プルミエ・エトワールの社長と、紅美堂(コウビドウ)の社長がかなりダメ出ししたらしいよ」
可哀相な御曹司。
「加賀見さんのお姉さんの会社と、もう一つは中国系の会社・・・女社長らしいんだけど」
多分、似たような2人なんだろうな。
何故かそう思った。
「紅羽は?」
じつはわたしも応募した。
半ば強制的に。
『もちろん出すわよね?』
アンヌさんにそう言われ。
「そっか。お互い頑張ろうね」
なんて仕事の話で盛り上がった。
テーマの募集の前から2人で話したいって言ってあったから、怪しまれるかなあって思ったんだけど。
良かった。気付いてないみたい。
どうしてか、彪翔に訊き辛かったのは、
『キヲツケロ』
先輩の、あの言葉のせいだろうか。
彪翔の何を、何に気を付ければ?
そんな事をぼんやり思っていたら。
「訊かないの?紅羽」
「え?」
彪翔から。
「記憶の事」
そう言ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!