第4話 元カノ元カレ

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「彪翔・・・」 「記憶が欠けている事に気付いたんでしょう?」 微笑んでいるその顔は、確かに彪翔のもので。 「わたしは・・・東條に会った事、あるの?」 「・・・あるよ」 それはいつ、どこで。 そしてあの金髪の男の子は---? たくさん聞きたい事があったのに、 『ピンポーン』 時間切れだった。 「紅羽、夜までもたなかったな」 ニヤニヤ笑って迎えに来た東條に、 「はい、元カレの名刺。抱きしめられてキスされそうになったらしいよ」 彪翔はあっさり告げ口して、 「あとはごゆっくり。僕は会場に戻るよ」 後ろ手をひらひらさせて、サッサと出ていった。 「彪翔!待って」 わたしの願い虚しく閉まるドア。 「元カレ・・・ねえ」 「・・・・・・」 怖くて後ろが見れません。 後ろから東條に抱きすくめられる。 「また約束、破ったな」 ひっ。 首筋にキスして、舌を這わせる。 ゾクリとした刺激に、身体を震わせ、 「んぅ・・・」 つい声が出てしまった。 「なに、カンジてるの?」 クスクス笑う彼の息が当たって、くすぐったくって身を捩(ヨジ)る。 彼の顔が見たくて、身を返してその胸に顔を寄せる。 「どした?」 優しい声でキスをくれた。 「怖いの」 彪翔の事も。 記憶の事も。 「・・・何かされたのか」 数段低くなった彼の声に、慌てて、 「元カレじゃなくて!」 否定したけど。 目を細く歪めてわたしを見つめる東條の表情を見て、ふと気付き。 「・・・あのパーティの時のヒトに、ヒドイ事したの?」 彪翔の言葉を思い出して訊いてみた。 「酷い事されたのは、お前だろう」 わたしの頬を撫で、手を掴み手首にキスをする。 「もう心配いらないからな」 甘く微笑む彼のキスを受けながら考える。 いくら東條がすごいからって、会社の重役を僻地に飛ばしたり、株価を暴落させたり出来るものなの? 「どうやって?」 「オマエが気にする必要は無い」 きっぱり言って部屋の中を見回すと、 「帰るぞ」 わたしの荷物を手にして言った。 「へ?」 「他の男の取った部屋でヤリたくねえ」 そういうもの? 良く分かんない。
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