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「彪翔・・・」
「記憶が欠けている事に気付いたんでしょう?」
微笑んでいるその顔は、確かに彪翔のもので。
「わたしは・・・東條に会った事、あるの?」
「・・・あるよ」
それはいつ、どこで。
そしてあの金髪の男の子は---?
たくさん聞きたい事があったのに、
『ピンポーン』
時間切れだった。
「紅羽、夜までもたなかったな」
ニヤニヤ笑って迎えに来た東條に、
「はい、元カレの名刺。抱きしめられてキスされそうになったらしいよ」
彪翔はあっさり告げ口して、
「あとはごゆっくり。僕は会場に戻るよ」
後ろ手をひらひらさせて、サッサと出ていった。
「彪翔!待って」
わたしの願い虚しく閉まるドア。
「元カレ・・・ねえ」
「・・・・・・」
怖くて後ろが見れません。
後ろから東條に抱きすくめられる。
「また約束、破ったな」
ひっ。
首筋にキスして、舌を這わせる。
ゾクリとした刺激に、身体を震わせ、
「んぅ・・・」
つい声が出てしまった。
「なに、カンジてるの?」
クスクス笑う彼の息が当たって、くすぐったくって身を捩(ヨジ)る。
彼の顔が見たくて、身を返してその胸に顔を寄せる。
「どした?」
優しい声でキスをくれた。
「怖いの」
彪翔の事も。
記憶の事も。
「・・・何かされたのか」
数段低くなった彼の声に、慌てて、
「元カレじゃなくて!」
否定したけど。
目を細く歪めてわたしを見つめる東條の表情を見て、ふと気付き。
「・・・あのパーティの時のヒトに、ヒドイ事したの?」
彪翔の言葉を思い出して訊いてみた。
「酷い事されたのは、お前だろう」
わたしの頬を撫で、手を掴み手首にキスをする。
「もう心配いらないからな」
甘く微笑む彼のキスを受けながら考える。
いくら東條がすごいからって、会社の重役を僻地に飛ばしたり、株価を暴落させたり出来るものなの?
「どうやって?」
「オマエが気にする必要は無い」
きっぱり言って部屋の中を見回すと、
「帰るぞ」
わたしの荷物を手にして言った。
「へ?」
「他の男の取った部屋でヤリたくねえ」
そういうもの?
良く分かんない。
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