第4話 元カノ元カレ

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翌朝、早朝。 「行ってくる」 そう言う彼に、玄関先でキスして見送った。 見送らなくて良かったのに、そう言いながらも嬉しそうな彼を見て、キュンとしてしまった。 一緒に暮らすって、いいな。 こういうのが。 なんて思いながらも2度寝。 待ち合わせは恵比寿のお店に11時。 9時くらいに起きれば間に合うし。 そう。 余裕で間に合った。 でも。 「藍井さまですね」 待ち合わせのお店に着いて通された個室には。 「紅羽、昨日ぶり」 なぜか元カレの先輩だけが。 「ああ、大丈夫。あとでみんなちゃんと来るから」 ニッコリ笑顔。 どういうこと? 「みんなには12時前にって言ってあるから」 店員さんの手前、引かれた椅子にしぶしぶ座る。 「あの・・・先輩?」 「名前」 は? 「名前で呼んでよ、紅羽」 なんなの? 「・・・」 わたしの不機嫌を感じ取って、 「昨日の話の続きがしたくって」 そう言って、店員さんにワインと前菜を持ってこさせた。 「わたしは、スパークリングウォーターを」 ワインを断わり、先輩を睨んだ。 「・・・怖いね」 苦笑して、 「三浦に見つかったから、きっと名刺は没収されてるかと思って」 その通り。 「ミチルちゃんからのメール、あれオレだから」 はあ? 「あのアドレスだったら誤魔化せるだろう」 何言ってるの、コノヒト。 白ワインを美味しそうに飲みながら、クスクス笑ってる。 「・・・ずいぶん三浦に邪魔されたからなあ」 遠い瞳で窓の外を見る。 窓の外には、お店の中庭が見える。 奥まった個室は、他の客が来ないようになっているらしく、わたしたちの声以外聞こえない。 「オレも少しは学んだんだよ?」 チラッとこちらを見て、微笑んだ。 「紅羽と付き合えたのも、けっこう根回しして。三浦の目を盗んで」 クスクス笑う彼を、ただボーっと見ていた。 「紅羽に送ったはずのメールが届いてなかったり、伝言が伝わってなかったり」 ワインを飲み干すとグラスを乱暴に置き、 「全部三浦に仕組まれてたんだ」 ギラッとした瞳でわたしを見た。
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