第4話 元カノ元カレ

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・・・なんかおかしいと思ったんだ。 ミチルちゃんとはそれほど接点なかったし。 でも他の子も来るって言うから。 「・・・」 わたしは終始、無言。 「ずっと紅羽が好きだったのに」 コノヒトは、何がしたいんだろう。 冷めた感情で見つめた。 「紅羽と別れる羽目になったのも、三浦が原因だ」 「違う」 え?っと、先輩がわたしを見る。 「彪翔は関係ない」 そう冷たく言い放つわたしに、苦笑する。 「ほら、紅羽は三浦に好いように操作されてる」 だんだんムカついてきた。 「今も紅羽の側にアイツがいるって知って、何とかしなきゃと思って」 力なく呟く先輩は、哀しげな瞳でわたしを見る。 腹が立ってきてたのに、こういう表情されると強く出れなくて困るなあ。 はあ。 溜息をついて。 「具体的に彪翔が何をしたかは知らない。でも」 そう。 「お互いが本当に相手を想って信じていれば、大丈夫だったんじゃないの?」 「今の彼氏にも同じこと言える?」 きつい眼差しで云われる。 「そうありたいと、思ってる」 記憶がなくても。 思い出せない事に不安を感じても。 「彼は5年もわたしを待っていてくれたから」 「・・・5年?」 訝しむ先輩を尻目に、 「帰る」 と言って席を立ち、 「もう誘わないで」 振り返り、彼を見る。 「アイツは高校の時から、紅羽に男が寄らないようにしてきてたんだ」 苦しそうな、顔。 「だから?」 「アイツは---」 「僕がなんだって?」 不意に聞こえた彪翔の声。 彪翔?! 先輩と2人して驚いて声のする方を見た。 入口に腕を組んでもたれかかり、冷たい瞳で先輩を見ている。 「帰ろう、彪翔」 わたしから彪翔の腕を取る。 「紅羽!!」 叫ぶ先輩に冷たく、 「もう名前、呼ばないで。何かのせいにしかできない人とはもう話したくもない」 それだけ言って、踵を返した。 「・・・これ以上紅羽に手を出すようなら、僕は知らないからね」 不吉な言葉を先輩に残す彪翔。 それって・・・ 東條のことだよね。 きっと。
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