第5話 おはぎと尊い血筋

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翌月曜日。 さっそく平穏をぶち壊す内線電話。 「藍井さぁん」 泣きそうな受付の子の声。 「どうしたの?」 「外国の方なんですが、英語が全く通じなくて・・・」 ウチの社の受付スタッフは、みんな英検1級を持ってて。 日常会話には困らないはず。 「どんな人?」 「長身でサングラスを掛けていて。長い銀の髪の男性です」 きっとそのサングラスの奥の瞳は、紅と蒼のオッドアイ、 そんな人、一人しか心当たりナイ。 「クレハって云うのは聞き取れたので・・・」 「分かった」 溜め息をついて、受付ロビーへ。 「クレハ!」 わたしの名を呼んで何語か分かんない言葉で話しかけてくるのを、 「うん。うん」 聞いてあげて、 「アンタ日本語ペラペラでしょうが」 大きくため息。 「は?」 目が点の受付スタッフに、 「この人、からかったのよ」 ゴメンねと、代わりに謝る。 「何しに来たの?」 どうしてココに? 「クレハに逢いに」 そう言ってわたしの腰に手を回し引き寄せて、首を傾けてキスしようとしてきたので。 冷静に。 「痛っ!」 傾けてる方向に耳を思いっきり引っ張ってやった。 「何すんのよこのド変態」 油断も隙もない。 この男には、 首を舐められたり。 胸を触られたり。 セクハラされまくってるから・・・ 容赦しないわよ。 「で、何の用?」 「その前に・・・放して下さい」 あら。 失礼。 耳を引っ張ったままだった。 どうしてココにいるのかーーー 加賀見さんも・・・おそらく東條も。 ある一定以上の人の中では有名なはず。 そこからわたしを見つけ出すのは簡単だろう。 加賀見さんは会社の部下だと紹介していたし。 問題は。 「だから、何しに来たの?」 コッチ。 「今度のプロジェクト、オレも参加しようかと思って」 は? 参加したいからって、ホイホイ出来るもの? 「その方が貴女といられる時間が増えますし」 ーーー退屈しのぎにもなる。 ボソッと呟いた言葉。 眉をひそめて、彼を見る。 退屈しのぎーーー つまりは、閑(ヒマ)をもて余していると。 そう云う奴にロクなのはいないはず。
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