第3話 自分の気持ち

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「・・・東條」 沈痛な面持ちで額に手をやる加賀見さん。 「それよりアンタさあ、もっとましな言い方ないわけ?」 加賀見姉弟に責められて、 「ああ?面倒臭え」 開き直る東條。 「あんた本当に覚えてないの?彼女だったりしたんでしょう?」 顎に手をやり考える。 「まあヤルだけだし、長く付き合った女はいねえから」 いちいち覚えてないらしい。 本当にサイテー。 「よく今まで刺されなかったな」 「頭の軽そうなのばっかり選んでたからな。お互いさまだろう」 大して興味も無さそうに言う。 「じゃあ紅羽ちゃんもそうなの?彼女でしょう?」 一番訊きたかった事を、 アンヌさんが、訊いてくれた。 不安に東條の顔を見ると、 「はあ?もったいなくて彼女なんかにするかよ」 やっぱり意味の分かんない答えだった。 はあ。 そうだった。 良く分からない価値観なんだった。 「彼女じゃないんだったら、何なのよ。まさかセフ・・」 「姉さん!」 加賀見さんが止める。 でもアンヌさんには、プライベートヘルスの事を言ってあるからなあ。 普通そう思うよねえ。 彼をチロッと横目で見上げると、 「・・・今は言えない」 なぜか顔を赤らめて、横を向く。 「・・・なんかバカバカしくなってきた」 話題に飽きたアンヌさんが、さっさと離れる。 「あ、着物はアンタが責任もって返しなさいよ」 その一言だけ振り返りざまに東條に言って、みんなの輪の中に消えていった。 「じゃ、紅羽。オレらも行こう」 「だから駄目だって」 出口に向かう東條を何とか押し止めるけれど、 「藍井・・・もういいぞ」 苦笑した加賀見さんにまで、帰るよう促されてしまった。 「三浦たちには言っておくから」 だいたいの人には挨拶出来たからな、と溜息をつきながら見送られてしまった。 色んな意味で見ている周りの視線を浴びながら、会場を後にする。 「東條・・・」 「ん?我慢できないなら、スウィート取るぞ」 じゃなくて! 「・・・おトイレ・・・」 取り合えす、ひと息入れさせてクダサイ。
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