第2話

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「先輩、これ、コピー貰っていいですか。」 後輩の声に、大儀そうに応える。 「あぁ、とりなよ」 後輩、といっても元エンジニアで大卒の葛原健二は、亜里沙より6つ年上の28歳だ。期別では亜里沙より3つ下になる。 「すぐ、返しますね。」 亜里沙の横柄な態度を気にするでもなく、葛原はコピー機に駆け寄って行った。 亜里沙は年上を好む。4つから6つほど年が離れた男には特に、強い魅力を感じる、はずなのだが、この葛原についてはそれが当てはまらなかった。 中肉中背、やや垂れ気味な太めの眉が特徴の大人しそうな顔、インドアな雰囲気に反して浅黒い肌をしている。 中の中の、上くらいだろうか。ある種の年上の女は彼を好むだろう。 「先輩、ありがとうございました。」 葛原が馬鹿丁寧に、両手でプリントを差し出す。 「よし、じゃぁ、缶コーヒー微糖、あったかいのな。」 亜里沙はそれを、葛原の顔も見ずに片手でひらりと引き抜いた。 年上の男の後輩は、葛原の他にも何人かいる。彼らには、きちんと敬語で話すし、接するときは笑顔に気を付けている。亜里沙は
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