第1話 森下という奴

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「いってきます」 時刻は6時45分。 いつもは7時に家を出る俺には、15分早い。 なぜかって? そりゃあ―― 「森下、遅ぇなぁ……」 奴と学校に行くためだ。 別に約束などしていないけれど。 俺は、昨日森下と別れた分かれ道のブロック塀に寄りかかり、ケータイを取り出す。 ――いわゆる、待ち伏せというやつだ。 しかし、奴は待っても待っても姿を現さず―― 「……」 時計は、気付けば8時15分を指していた。 HRは8時30分から。 あと15分しかない。 「ちっ……」 誰に対するわけでもない、格好付けのための舌打ちを一つ鳴らしてから、 ケータイを鞄にしまい、俺は学校に向かって全速力でダッシュした。
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