第1話 森下という奴

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「恥ずかしがり屋……か」 「あっ、違かったらごめんね!! でも、中村君って、きっと優しい人だと思ったから……。 ただ恥ずかしかったのかなって。嫌なこと言ってたら、ごめんね!!」 そう言って、森下は眉根をキュッと寄せ、申し訳なさそうな顔をする。 「いや、別に構わねぇよ。 ただ……こんな風に言われたのは初めてだったから」 「そうなの!? てっきり、色んな人から言われて嫌なのかと……。 そっかぁ……。 なんか嬉しいなぁ……」 一人納得して、森下はニコニコと微笑む。 「おい、顔がニヤけてんぞ。 何がそんなに嬉しいんだよ?」 「ん? だって、私が初めて中村君に“恥ずかしがり屋さん”って言ったんだよ? その人の人生初めての経験に自分が関わったと思うと……。 なんか嬉しくならない?」 それが、さも当たり前のことのように楽しそうに話す森下。 「ははっ……お前こそ、頭大丈夫かよ」 俺には奴の気持ちは良く分からないけど、その満面の笑みを見ていると、つられて俺まで頬が緩んだ。 「なっ……。失礼な!!」 そう言い返してきた森下の頬は、何故かうっすら桜色に染まっていて……。 「っ……」 俺は生まれて初めて、女の子を“可愛い”なんて思った。
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