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「くくっ」
――お前はこの短い時間で二つも、俺の初めてを奪いやがったな。ん、なんか“初めてを奪う”って卑猥に聞こえるな……。
なんて心の中で下らないことを考えていても、もちろん奴に分かるわけがなく……。
「中村君、なんで笑ってるの?」
森下は、コテンと首を傾げる。
その仕草さえ可愛らしく、当然、彼女いない歴イコール俺の年な奴が直視していられるものではなく……。
「……なんでもねぇよ」
誤魔化すように目線を反らした。
トクンとなった、心臓の音……。恋という初めての感情は、案外簡単に落ちるものらしい。
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