第2話

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 高校三年生の春。正確には三月下旬。  私は何故か街を闊歩(かっぽ)していた。いや違った、友達と会うために街を闊歩していた、だった。待ち時間がものすごく長い魔の交差点をこえ、最寄駅へと向かう。  三月の昼空。空は晴れていて、昨日降った雪が道のわきにまだ残っている。ブーツで踏むと、シャリと子気味の良い音がした。  突如、コートのポケットがざわめいた。身に覚えのない不気味さに首筋に悪寒が走る。生物(なまもの)を入れた記憶はない。恐る恐る覗くと、昨日買ってもらった小型通信機(世間一般では携帯電話と言われているらしい)が光を発していた。これがあると、外で公衆電話を使わないでも家の電話に連絡することができるらしく、もうすぐ一人暮らしを始める私のために両親が買ってくれた。  昨日読んだ取扱い説明書によると、これは誰かから私へのコンタクトを意味しているらしい。昨日お母さんに「いついかなる時でもマナーモード(よくわからないけど、このモードに設定しておくことがマナーらしい)にしておきなさい」と言われたので、それに設定しておいたんだけど……。なにこれ? サプライズモード? どうやら私は機械と相性が悪いらしい。
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