第1話

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 高校三年生の春。正確には三月中旬。  出願した大学入試の試験を一通り終え、後はその結果待ちをしていた俺はあてもなく外を歩いていた。だって仕方がないだろう、どうせ家にいても暇を持て余しているのは同じなのだから。  三月の昼空。日差しがあるが肌寒い。それでもすれ違う人は何人かいた。その光景に平和だなと和むのは、受験勉強からきた疲れなのだろうか。俺は少しはにかんでしまった。  合否の結果待ちというのは、ドキドキして息苦しくて死にそうになるというイメージがあるけど、案外俺にそんな感傷は無い。試験には確実な手ごたえがあり、この回答ならば合格は確定事項だと自負しているからだ。これだけ聞くと、俺がナルシストのように見えるが――いや実際そうなのかもしれないが、そうではないといわせてほしい。  昔から俺は自分の未来というものがわかるのだ。宝くじの一等ナンバーなどは予知できないけど、例えば、ある商品はこれこれこういう魅力があるゆえにこのくらい売れるというのはわかる。原因と結果の因果性を理論的に解釈することである程度の事象は推察できるんだ。  だから数学や物理は大の得意分野だった。自慢じゃないけど、と最初に断るのは卑怯だが、今まで解いてきた数学や物理の試験問題で間違った回答を出したことは一度もない。勿論、万全の予習復習あってのことだが。
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