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とりあえず、林田が無事発見されたことを母親に連絡し、自宅まで送り届けることにした。
「俺は許すよ。親にも今日のことは話さない」
並んでゆっくり道を歩いていると、急に林田が予想もしないことを言い出した。
「ゆ、許す? 中村を?」
「うん。俺もやり過ぎたって思うし……仕返しされて当たり前なんじゃないかな。だから先生も、中村の親にも黙っておいてやってくれよ」
この子は僕が想像するよりもしっかりした子だった。
あんな酷い目に合わされたというのに、その相手を許したのだ。
その寛大さに心を打たれた。
「確かに、それは立派なことだと思う。だけど中村はやっちゃいけないことをしたんだ。きちんとお前に謝らなくちゃいけない。それがけじめというものなんだ」
林田は黙って頷いた。
「……やっぱりお前は、無理をしていたんだろ? 何か悩みがあるんじゃないのか? 良かったらでいいから、話してくれないか」
少しの間躊躇した様子だったが、やがて林田は悩みを打ち明けてくれた。
「……あのクラス、なんか嫌なんだ。上辺だけの付き合いって感じで。俺はそういうの嫌なんだ。だからついイライラして……。本当は仲良くしたいんだけど、うまくいかないんだ」
なるほど、そういうことだったのか。
すまない。早く気づいてやれなくて。すまない。
「話してくれてありがとう。そうだな、みんなで話し合う時間を作ってやらなくちゃいけないな」
「あの、今日のことは……」
「大丈夫、誰にも言わないでおくから。お前がそういうのなら」
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