3人が本棚に入れています
本棚に追加
ああ、また死んだんだね。はいはい。
そう、思うしかない。最近、毎日の様に自殺者のニュースが流れていては、他人事ですらなくなる。すなわち、なんでもなくなる。
薗田加代子は、高校指定の赤色のタブレットケースを持つと、テーブルの上の飲みかけの牛乳を飲み干し、白い髭を作ってボーッと暫くそこに立ち尽くして、そのニュースに見入った。……可愛い子だ。自分と同じ位の歳の女の子が、加代子に微笑みかけていた。パッと画面が切り替わり、美しい赤レンガ色の校舎が映る、白いフラッシュの世界の中での校長の会見、どこか困ったように舌を回す、ハゲ頭が光ってる……。
いつしかみんな飽きるのだろうか。彼女は半分退屈していたーー同級生から放たれる言葉も、テンプレート化している。あの子が死ぬなんて。イジメ……気がつきませんでした。イジメっぽいことはされてましたね。なんで、止めてあげられなかったのかなーーパッと画面が変わり、今度は親御さんの涙の会見。『真実を明らかにしてください……』
「ああもうっ!またぼうっと突っ立ってる!早く行かないと遅刻でしょ?」
母の怒号でハッと我に帰れば、時刻は既に八時二十分。内心慌ててはいないが、慌てる素振りでも見せておかないとまた、うるさい。
ちらりと、リビングから玄関に駆け足で行こうとして、テレビの方に振り返った。遺書の紙の白さが、暗い背景の中から浮き出して、アナウンサーの美しい声で命を吹き込まれていた。『私をいじめた人達を、許さない。呪い殺してやる』
最初のコメントを投稿しよう!