第1話

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餌の正体はフタホシコオロギだった。 信濃川に栄養を与えるために、色んな餌をやって太らせているコオロギ。 防音だった水槽から飛び出して、力強くリッリッと鳴いている。 「これは信濃川も出して食べてもらった方が?」 「やーめーろー!!!」 侑都のとんでもない行動に、追い出されたあの日が重なった。 『我慢できないっ』 『あっ だっ 駄目だ! 侑都っ』 『――好きだ。好き。やばいくらい好き。暮人も好きって言え』 侑都の手が、服に侵入しキッチンで盛り始めた時だった。 『ぎゃあああ! ヘビ!!!!』 『うわぁぁぁ!! ネズミー!!』 『!? ルー?』 その当時、アルバイト先から預かっていたルクセンブルク(中称、ルー)が、開いた扉から脱走してしまった。 ……餌の冷凍マウスを口にくわえたまま。 『す、スミマセンっ』 『ぎ、ぎゃあああ!』 すぐに蛇を捕まえに部屋から飛び出すと、廊下にいたカップルがまたもや悲鳴をあげた。 『……?』 『か、管理人さーん!!』 『――あ』 俺、侑都に襲われてたから、デニムのジーンズさえファスナーが下がり、上半身にはキスマークが浮かびあがり、その俺の後ろには侑都がカップルを睨み付けていた。 要するに、 色々全部、バレたんだ。
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