213人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
餌の正体はフタホシコオロギだった。
信濃川に栄養を与えるために、色んな餌をやって太らせているコオロギ。
防音だった水槽から飛び出して、力強くリッリッと鳴いている。
「これは信濃川も出して食べてもらった方が?」
「やーめーろー!!!」
侑都のとんでもない行動に、追い出されたあの日が重なった。
『我慢できないっ』
『あっ だっ 駄目だ! 侑都っ』
『――好きだ。好き。やばいくらい好き。暮人も好きって言え』
侑都の手が、服に侵入しキッチンで盛り始めた時だった。
『ぎゃあああ! ヘビ!!!!』
『うわぁぁぁ!! ネズミー!!』
『!? ルー?』
その当時、アルバイト先から預かっていたルクセンブルク(中称、ルー)が、開いた扉から脱走してしまった。
……餌の冷凍マウスを口にくわえたまま。
『す、スミマセンっ』
『ぎ、ぎゃあああ!』
すぐに蛇を捕まえに部屋から飛び出すと、廊下にいたカップルがまたもや悲鳴をあげた。
『……?』
『か、管理人さーん!!』
『――あ』
俺、侑都に襲われてたから、デニムのジーンズさえファスナーが下がり、上半身にはキスマークが浮かびあがり、その俺の後ろには侑都がカップルを睨み付けていた。
要するに、
色々全部、バレたんだ。
最初のコメントを投稿しよう!