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車道の脇に聳える、誰しも寄せ付けないコンクリートの高い壁。
その上の有刺鉄線を越えていく揚羽蝶。
「あっ、チョウチョ」と、言葉を覚えたてのサクラが呟いた。
揚羽蝶を見送って「いっちゃった」
私は、いつもこの道を通る。
道沿いの公園で、サクラは砂遊びを始めた。
人の気配を感じて振り向くと、初老の女性が微笑みかけてきた。
「あと何年なの?」
「えっ…」
「待ってるんだろ、旦那をさ」
一瞬にして、私の心は動揺して掻き乱された。
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