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~17章~ #2
先生と私達親子の出会いは夜間救急だった。
夜中、高熱が出て苦しそうにしている私を見兼ねた隣のお婆さんが病院へ連れて行ってくれた。
お婆さんは母に連絡してくれたけど、仕事だから来れる訳もなく、お婆さんは帰って行った。
高熱で心細い私に、当直だった先生は他の患者を診ながら優しく接してくれた。
次、目が覚めた時には母がいて、先生にお礼を言っていた。
医者と患者と患者の母親。
それだけの関係。
でも、その出会いがきっかけで、母と先生の関係は始まったんだと思う。
具合が悪くなると必ず先生が診察してくれた。
先生は母の次に大好きな人になり、父親を知らない私にとって、先生はお父さんみたいな存在で、お父さんになって欲しいと思っていた。
いつも、夕方になると真っ赤な口紅に香水をつけた母は綺麗な格好をし、出かけて行く。
そんな母の姿を見て、何故かヒソヒソと話している近所の人。
何も悪いことをしていないのに、ペコペコする母。
夕方の母は仮面を被っていて、嫌いだった。
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