~29章~

7/10
前へ
/35ページ
次へ
シンとしたこの場所に、ギィ、ギィ、と足を進める度にきしむ音だけが響く。 『礼拝堂で待っています』 震える手で送信した内容。 伝えるならこの場所以外考えられない、ここしかないと思った。 翔さんの返事に不信な気持ちは一切なく、ただ… 『了解。早く会いたいから急いで行くよ』 涙が出るほど嬉しいのに、今の私には悲しみの涙しか出てこないだろう。 いつもの席には座らず、一番前で立ち待っていると、扉が開く音がした。 「小百合、おまたせ」 振り返ると、会いたくて堪らなかった人が立っていて… こちらに向けられるその瞳は、1週間前と何も変わらず私だけを見つめていた。 .
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

510人が本棚に入れています
本棚に追加