~29章~

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一歩、また一歩と私に向け足が進められ、そして目の前に。 「小百合、ただいま」 「…おかえりなさい」 ん?と首を傾げ、 「少し鼻声だけど…小百合、風邪ひいたの?」 風邪ひいてることがばれてはいけないと、咳をしないよう気をつけていたのに、やはり翔さんに見破られてしまった。 「うん、少し…でも、大丈夫だから」 そう伝えても心配そうに私の顔を覗きこみ、おでこに手を置こうとしていて… その手を避けるように、後ろへ下がった。 「小百合?」 「風邪うつるといけないから…」 触れられれば…… その手を… あなたの全てを、愛しいと想う気持ちが止められなくなるから… .
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