423人が本棚に入れています
本棚に追加
彼の隣を通り過ぎ、ただ前だけを見て進む。
「小百合!!」
振り向かない。
この道を…
私は1人で歩んでいくんだから。
バタン。
ザァザァと音をたて、地面に叩きつけるように降っている雨。
会社を出た時は曇り空だったのに、私達の別れを知っていたかのように降り続けていて…
どしゃ降りの中、傘もささずにそのまま歩き続ける。
雨は私の体を容赦なく打ちつけ、あっという間に全身ずぶ濡れになっていた。
でも……
雨でよかったのかもしれない……
目から頬につたう涙は、雨で隠せるから。
彼の…
私の名前を呼び叫ぶ声を、雨の音が消してくれるから…
.
最初のコメントを投稿しよう!