~29章~ #2

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彼の隣を通り過ぎ、ただ前だけを見て進む。 「小百合!!」 振り向かない。 この道を… 私は1人で歩んでいくんだから。 バタン。 ザァザァと音をたて、地面に叩きつけるように降っている雨。 会社を出た時は曇り空だったのに、私達の別れを知っていたかのように降り続けていて… どしゃ降りの中、傘もささずにそのまま歩き続ける。 雨は私の体を容赦なく打ちつけ、あっという間に全身ずぶ濡れになっていた。 でも…… 雨でよかったのかもしれない…… 目から頬につたう涙は、雨で隠せるから。 彼の… 私の名前を呼び叫ぶ声を、雨の音が消してくれるから… .
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