二の焦点

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重い。 耳障りな金属音は、甲冑か何かを着込んでいる為か? 全く反応が無いため、諦めて立ち上がる。 「他に誰か居ませんか! 僕の名は……。僕の名は……?」 張り上げた声のトーンが下がっていく。 (あれ……僕の名前は? 僕は……僕?) 自分の名が思い出せない。 素性も年齢も記憶から欠落している。 ただ、自分が女性だと言う認識はあった。 自分の顔や身体を触っていく。 何やら軽装でマントを羽織っている。 されど何やらよく分からない貴金属類が、身体のあちこちに付いているのが分かった。 「何なんだよ全く、誰かいませんかー!」 声が虚しく反響する。 声の響き具合から、どこかの隧道にいるようだ。 愚痴りながら先を進もうとして、足を滑らせた。 何かを踏んで、足を踏み外したのだ。 「いっ……た。さっきから何が地面にいっぱいあるんだよ……」 足元を手探りして、今度は足を見つけた。 誰かの足の上に乗って、転んだのだろう。 「あなた達、一体何で寝転んでるんだよ!」 足の持ち主に掴みかかろうとして、その手は空を切った。 「……?」 不思議そうに暗闇の中で手を振るが、当たるものが無い。 本来、“足の先にある筈の胴体が存在しない”のだ。
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