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「えっ……?」
恐る恐る触れた足を掴んで……持ち上げる。
いや、持ち上げてしまったのだ。
軽い。
足しか無いのだ。
当然であろう。
生唾を飲み込んで足を離す。
ようやく、周りに倒れているモノの正体に彼女は気がついた。
「嘘……だ。こんな……」
彼女は首を何度も振ってから走り出した。
今度は躓こうと、倒れようと関係ない。
ただ、ひたすら此処から遠くに逃げるように走りつづける。
考えたくは無いが、足元に転がっているモノは全て人の塊のようだ。
闇の中に、刺すような光りが見えた。
いきなり見た光源は、網膜を焼くように痛い。
されど、そこがただ一つの出口だ。
そこを目指してひた走る。
自分の荒い呼吸音と、足元で響く水しぶきの音だけが耳に残っていく。
ようやく闇を抜けて、光の元に抜け出た。
光に目が慣れると、思ったより辺りが明るくない事に気がつく。
見渡した場所は、広い洞窟内部だった。
淡い青い光は、洞窟側面につく苔のせいのようである。
抜け出た先で、ようやく自分が血まみれな事に気がついた。
「何……これ」
振り向いた先ほど通ってきた道の奥には、折り重なって倒れる死体の山がチラリと見える。
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