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開けた空間で、黒い炎が生き物のようにうごめいている。
それが迫り来る巨人と、青い人間達を軒並み凪倒していく。
その周りを碧い雷光が駆け巡っているが、黒い炎には余り意味がないようだ。
(何……これ?)
意味の分からない光景に顔を歪ませる。
恐怖から少女は反対側に走り出した。
あの場所にいる事が、とてつもない危険を孕んでいると、記憶に無い筈の経験が語っている。
(何がどうなってるんだよ!)
少女はひたすら走った。
遠くへ、遠くへ。
ただひたすら遠くへ。
地獄の淵から、離れようともがく亡者のように。
その前にいきなり影が現れた。
洞窟を覆うような巨大な影が。
少女は息を呑んだ。
表現しにくい異形の化け物がうごめいている。
針鼠に鮫の頭を乗せて、身体全体から烏賊の脚を触手のように無数に出したような怪物だ。
触手の先端は気持ち悪いぐらい、リアルな人の手が付いている。
少女は口を押さえて後ずさった。
記憶がなくとも、明らかに危険なモノだと理解はできる。
伸びて来る触手の群れ。
それを少女は反射的に全て避けきった。
(体が勝手に動く?)
体に染み付いた体捌き。
それは、自分が戦闘経験を持っている事を示している。
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