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無意識に体に纏わらせた鎖から、輪環付きのチェーンを取り出す。
それを後退しながら回す。
空気を切る音から、妙な音が響き渡った。
「トーラス呪詠式・ソロ“吐き出す炎槌”」
チェーン・トーラスを持たない腕を突き出すと、そこに炎で出来た鉄槌が現れる。
間髪入れずにそれを横凪に払う。
打ち込まれた炎撃が、化け物を球遊びのように弾き飛ばした。
「やった!」
胸の前で小さくガッポーズをする。
そこでハタと気づく。
自分が魔術を使った事実に。
「魔術……? ボクは魔術師?」
不思議そうに手に握ったチェーン・トーラスを見つめる。
次に自分の体でジャラつく、チェーンの群れに輪環が散りばめられている事に気づいた。
(これが全て魔術触媒?)
再び手の中の輪環を見つめる。
その腕を、いきなり後から巨大な手に鷲掴みにされた。
「……?!」
恐怖から直ぐさま振り向く。
そこには先程の化け物とそっくりな、巨体が存在していた。
逃げようにも、がっちり掴まれた腕はびくともしない。
「嘘……?」
そのまま触手が残りの腕や足を掴んでいく。
鮫ような頭部で、赤い瞳が四つ輝き出した。
死に物狂いで身体を揺さぶる。
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