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所々に砂嵐のような耳障りな音が、声を消してよく聞き取れない。
(デッドスポット?)
『まあ~、この説明も■回目なんだけ■ね。干渉率■下げすぎると記■に残らないのか。人■は不便だね』
そう呟くと、道化師はからくり人形のように笑い出す。
少女は訝し気に睨み据えた。
目の前の道化師は、人間と言うより質の悪い悪魔のように見える。
(君は何なんだ!)
『ボ■の事より、自分の事の方■問題じゃないのかい?』
(僕の事……?)
『その通り! 君は自■が何者か覚えて■ないだ■う? 自分の名前を■ってみなよ!』
道化師の笑いを含んだ言葉を、少女は耳元で聞いた。
いつの間にか背後に回っている。
(僕の名は……!)
振り向いて叫ぶ前に硬直した。
名前が思い出せない。
それどころか、経歴、記憶すらあやふやだ。
何とか生活記憶はあるようだが、それ以外は全く思い出せない。
『僕の名は……何■ね? 思い出■ないだろう。思い出せないよ■? まあ、それ■仕方がないんだ。君は■■だからね。欠落部分はどう■も出来ない』
道化師がシッシッシッと妙な声で笑う。
少女はそのまま俯いた。
自分が何者なのかも、何処にいるのかも、何をしているかも分からない。
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