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朦朧とした意識を覚醒させたのは、頭に響く嫌な痛みだった。
偏頭痛のように、短い感覚でこめかみに痛みが走る。
(いっつ……。また……?)
目を開いたつもりが、辺りは真っ暗で何も見えない。
「また、ここ?」
両手足に激しい痛みが走る。
不思議に手足を見るが、真っ暗で何も見えないのは以前と同じだ。
仕方なく直に触れて確認するが、化け物に潰された筈の両手足に別段変わった所はない。
ただ、自分の体が濡れている触感が伝わってくる。
足元には、ぬめりのある液体も感じた。
この鉄臭いのは血の臭いだろう。
「さっきのは白昼夢? 訳がわからないよ」
レーヴェは立ち上がると、前に向かって歩き出した。
暗闇の中を、足元を気にしながらゆっくりと進む。
隧道に出てから、レーヴェは立ち尽くした。
例の戦場を逃げた先には化け物がうろついている。
不意打ちでなければ戦いようはありそうだが、記憶があやふやな状態で戦闘を行うのは芳しくない。
「ここは……あの戦場まで行くしかない……」
仕方なく少女は洞窟の奥に足を向けた。
夢と同じように奥に進むにつれて、心臓が押し潰されそうな重圧感を感じはじめる。
レーヴェは一度大きく深呼吸してから、再び足を進めた。
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