三の焦点

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僧侶の疲れた表情に、レーヴェは首を傾げた。 「可愛らしい……?」 その仕草を、僧侶は何故か気の毒そうに眺めた。 「そう言えば、記憶に混乱があるらしいわね? 自分の顔も思い出せない?」 「顔……」 不憫に思ったのか、僧侶は懐から小さな手鏡を取り出した。 それなりの装飾のついた鏡は、安物には見えない。 「女の子なんだから、最低限の身嗜みぐらい気にしなくちゃ」 渡された手鏡をマジマジと見る。 そこには十五、六辺りの少女の顔があった。 くせっ毛だらけの青い髪に、猫の様な瞳が印象的に見える。 レーヴェは不思議そうに自分の顔に手を触れた。 見知った顔だ。 ただ、何か違和感を感じる。 何かがしっくり来ない。 着ている軽装服も少々でかい気がする。 取り合えず、くせっ毛を手櫛で梳かして見るが全く直りそうにない。 「ところで名前は思い出せるかしら?」 「名前……名前はレーヴェ、レーヴェ・ブロイエシュテルン」 「変わった名前ね? 出身国は?」 その答えにはレーヴェは首を振った。 「どこの国……部隊にいたかは分かる? 多分、深部まで進めたのは、神誓王国メルテシオンの部隊しか無いとは聞いているけど?」 「神誓王国……メルテシオン」
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