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その言葉には何か聞き覚えがあった。
自分はそこの出身なのかと茫洋と考える。
「取り合えずメルテシオンの戦争参加者リストを取り寄せて見るから、今はゆっくり休んでいて頂戴。外傷は無いけど、精神疲労はピークを超えているわ」
「あの、他に生き残りは?」
縋るような言葉に、僧侶は少し視線を上にあげた。
顎に手を当てて首を捻る。
「確かメルテシオンの騎士の方が一人だけいたって聞いたけれど……? あら……おかしいわね? 生き残りは一人だけだって聞いた気がしたけど……。貴女で“二人目の筈”なのに、何処で聞き間違えたのかしら?」
「……」
レーヴェは黒い炎を思い出した。
正確にはそれを身に纏っていた剣士を。
(彼が……僕以外の生き残り)
黒い剣士の顔を、何処かで見たような気がする。
――だが、やはり何も思い出せない。
「彼は何処に?」
「そこまでは聴いていないけど、何処かの保養所にはいるのかしら?」
僧侶が煮え切らない返答をしていると、外から兵士らしき者が部屋に入って来た。
負傷者の数が甚大な為に、レーヴェの応急治療が終わったら他の治療所に移るようにとの指示だ。
僧侶はレーヴェに備え付けの簡易ベットで安静にするようにと指示すると、そのまま兵士と共に部屋を退室した。
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